晃祐堂・TOHOBEADSがFRICS Fabと進める
職人の価値向上のためのDX

晃祐堂・TOHOBEADSがFRICS Fabと進める  職人の価値向上のためのDX

化粧筆や熊野筆の製造・販売を行う株式会社晃祐堂。グラスビーズ製造・販売を行うトーホー株式会社。職人技術を要する事業を行う両社が東洋電装のFRICS Fabと共にDX実証に取り組むに至った経緯やものづくり業界がDXに取り組む意義について、代表のお二人にお聞きました。

Interviewee

※ 社名50音順

株式会社晃祐堂 取締役社長 
土屋武美 様
トーホー株式会社 代表取締役 
山仲巌 様
Interviewer
東洋電装株式会社 
本多健太

「ものづくり」「広島」という共通点。同じベクトルで考えDXに取り組みたい

株式会社晃祐堂 取締役社長
土屋 武美 様

本多:早速ですが今回、東洋電装とDXの実証に踏み切っていただいた経緯をお聞かせください。
土屋さん(以下、敬称略):一番は信用できるとこと組みたいなってのが大きいですね。できるできないではなく、仲の良いっていうと言い方が違うかもしれませんが、ものづくりに関する考え方のベクトルが合う方とやりたい。いろんな引き合いがあって営業とかプレゼンを受けましたけど、桑原さん(弊社社長 桑原弘明)の人間性であるとか、一緒に取り組みをしている横山さん(株式会社総社カイタックファクトリー 工場長 横山巧様)であったりとか、巌社長とだからやってみようと踏み切れた部分はありますね。一言で言うなら一緒に取り組む人の人間性です。
総社カイタックファクトリーとのプロジェクトについてはこちらの記事をご覧ください
総社カイタックが挑む工場DXとその先に目指すものとは
土屋:大きい会社の方がもしかしたら東洋電装さんよりもできることが多いかもしれないですが、そうではなくTOHOBEADSさんのVISIONで「Connecting people」とあるように人と人の繋がり、人間性が一番大事かなって思いますね。今回DXに取り組んでいるわけですが、私たちは本質的なところはやはりアナログな部分だと考えていて、全てを数値化して横並びで比べれば より数値が高い会社はあるかもしれないですが、そうではなく人間性で東洋電装さんと組みたいと思いました。
本多:ありがとうございます。こんなに嬉しいことはないですし、改めて背筋が伸びます。
山仲社長にもDXに関する提案や営業が沢山あったかと思いますが、弊社と組んでいただけた決め手を教えていただけますか?
山仲さん(以下、敬称略):僕は二つあって、社内にシステムはあるんですけど独立していて一気通貫で見えるようになっていない。「せっかく取り組んでいることを見える化したら現場がもっと輝くようになるよ、ものづくりをもっとカッコよく見せていこうよ」桑原さんに言っていただいて、それができるならぜひお願いします。って思ったのが一つ。
あとはやっぱり、先ほどの土屋社長の話じゃないですけどこれからローカライズの時代というか、地域で一体になってやっていくことが重要だと思うんですよね。広島でうちや東洋電装さんは可部ですけど、強いものづくりをしてる企業って沢山あるんですよね。全部が全部東京や大阪の大きい会社がいいかっていいうと、実際にものを考えて、手や身体を動かしているのはローカルの会社が多いので、中間搾取されるんじゃなくて、そういったチームが一緒にやることで価値を出してで輝いていくことが重要だと思ってるので。それを実現する手段として同じ地域でものづくりをしている東洋電装とだから今回DXに踏み切ったのはありますね。
少し長期的な目線で見たら土屋さんの会社や、僕たちみたいに自社の製品で直接海外と取引できる企業は広島でもレアケースかもしれませんが、そういう会社や職人という仕事の魅力に気づいてもらえたら、東京や大阪で働いている人が広島に移住してきたり、広島から外に出た人が戻ってきたりして、より地域が盛り上がるような循環が起こるんじゃないかなって思ってます。

海外と直接取引をする会社だからこそ守りたい技術

本多:たしかに、広島でもレアケースとおっしゃってましたが、「自社の製品で直接海外とビジネス」できるっていうのは日本全体でみても本当にレアだしすごいことですよね。
土屋:たぶん僕らは丁度中間におるんですよ。ほんとに芸術性っていう職人の人たちと工業製品をつくっているとこの丁度真ん中にいてどっちもできる。

トーホー株式会社 代表取締役
山仲 巌 様

山仲:うん
土屋:だけど、我々は芸術のほうから来てるから工業系の力がまだちょっと属人化しているとこがあるから、それでやっぱりDXが重要になってくるんじゃないかな。ものづくりをしている企業なら当たり前だけど、継続的にものを作り続けることが重要なわけで、属人化してたら、その人が亡くなったり辞めてしまったら、もうそれはできないじゃないですか?だからそれをどうやって繋げていくかって考えたらそれは仕組みづくりになってくるよねと。
つまりそれは見える化、会社の透明化ってことが一番重要なことなんで。まぁデジタル系のいろんな機器とか細かい話を置いといて、今回その考えを浸透させるっていう意味ではすごい良かったな。
山仲:そうですね、本当に仰る通りですよ。結局伝統工芸っていう分野がなんで衰退していっているかっていうと、技術が共有されなくて、そうすると新しいイノベーションが全く起きないから新しい売り先とかもなくなって職人さんがどんどん減っちゃってるんですよ。ただ僕らとしてラッキーなのは、工業製品に近い部分もあるんですけど、属人的な技術というかブラックボックスな部分があるから装置産業じゃなくてまだ生き残っていれてる。だから日本はもっと地方の職人のモノづくりをバックアップして投資していくべきだと思ってるんですよ。
正直、ボタンを押してラインでできるようなものを日本でやっても勝てないよね。それはもっと人件費が安かったり土地代、電気代とかコストを抑えられる場所でやった方がいい。日本が世界で戦うにはやっぱりどこかにブラックボックスな技術があって機械だけじゃできないってとこが一番重要で、さらに外貨を稼げるってとこで戦ってかないと日本の内需だけを見てたら今後は生き残っていけないと思ってるから。
ね?
土屋:ほんとに僕らも世界を見てビジネスしなきゃいけないよね。うちも海外の売上比率を伸ばすことは意識してやってますね。
本多:それができるのも海外の企業や他社じゃ真似できないブラックボックスな技術があるからですもんね。
土屋:そうですね、特にビーズなんて他誰でもできないんじゃない?
山仲:まぁやろうと思ったらできるのかもしれないですけど、うちの工場見てもらったらわかるけど手がかかりすぎて誰もやりたくないはず。笑
土屋:うちもそうだわ。笑
山仲:たとえば今から誰かがスタートアップで何やろうかなって考えたときに、よっしゃビーズやるかってなって事業計画書いたとしても頓挫するよね。採算が合わないから。銀行もきっと今から始めるって言っても貸してくれないよね。
土屋:手間かかる割には短期では儲からないからね。今の若い子達ってYouTuberになりたいとかって言うじゃない?
本多:そうですね。
土屋:だから短期間でお金を稼ぐってイメージが根付いてると思うんだけど、僕たちはそれでいうと真逆なんですよ。めっちゃ手をかけて付加価値を乗せて提供するっていう。
山仲:ちょっとずつ儲かるって感じ。けど長くいける。けど今から設備投資して立ち上げるってなると、事業計画が「40年かけて回収します」みたいなプランじゃないと合わないんですよ。
なんでそれが当時日本でなんでできたかっていうと、戦後だったからだよね。
0からスタートだから右肩上がりで絶対インフレになるのわかってたからどんどん貸すと。だから成り立ったんであって、全世界でみても今からこのビーズの製造で同業は二度と出てこないと思うね。参入障壁が高いから。外資でどれだけ資産があっても出資してやりたいって思う企業は今ないんじゃないかな。土屋さんとこもそうですよね?
土屋:そうねー、筆もやろうと思えばできる。ただメンドクサイし短期でみたら採算が合わないからね。
中国製とかライバルとかはあるけど、やっぱり今世界的に景気が悪くて安いものしか売れないって言ってるね。で、そういう状況だと参入しないですね。

DXを進めた先で残したい「日本の伝統技術」

土屋:山仲さんとこ今何年?
山仲:72年
土屋:うちは45年なんですけど、歴史を積み上げていくことに価値が出てくるんですよね。続けていければね。でも続けて行くためには伝統を守っていくだけじゃダメで、ある程度時代に一部迎合していかないといけない部分もある。
だからこそデジタル化していくことも大事。
本多:それは現場の生産体制であったり会社の文化も含めてですよね。
山仲:そうそう、最後は職人さんが重要なんで。職人としてやってみたいなっていう会社、現場にしないと若手がやらないよね。もちろん若手がこれからやる価値がある ものづくり だと僕は思うんだけど、僕が思って言ってるだけじゃ意味がないし今後続けてくことは出来ないから。そこは考えていかないといけないよね。
土屋:職人っていう言葉のイメージもあるよね?日本って職人の地位がまだまだ認められてない気がするんだよね。ヨーロッパだったらマイスターとか呼ばれててカッコいいし尊敬される仕事になってるし地位高そうじゃない?
本多:はい
土屋:ものづくり業界全体で職人のブランディングが重要になると思ってて、例えば今は、人間国宝とかだったら地位も高いし尊敬されててお金も稼げる。でも一般的な職人はっていうと世間的にそういうイメージがないと思うんだよね。だからこそ、職人の地位を上げてかないとなって。そいういう意味でいうとうちは伝統工芸士が二人いてですね。
山仲:すごいですね。
土屋:そのうちの一人はこの前、伝統的工芸品産業功労者の表彰において経済産業大臣賞を受賞しました。また弊社の会長も、伝統的工芸品公募展という何百も応募があるなかで14個だけ賞があるんですけどバイヤー賞というのをいただいたんですよね。職人の地位が向上するのも大事だし、会社として価値ある商品を作っていく、その歴史を積み上げていくことが重要なんですよね。ただ歴史を積み上げていくといっても昔ながらのやり方ばっかりだとダメなんですよね。だから僕がいつも言ってるのは「伝統は守るべきものであるけど、縛られるものじゃない」

東洋電装株式会社
本多健太

山仲本多:おぉ~~~~
土屋:っていう風に言うと、カッコいいでしょ?
山仲本多:笑
土屋:実際にうちは普通の筆から派生して化粧筆つくって、そこからボディブラシ、お掃除ブラシとか、靴磨きとかうちの筆のいいところの毛先のやわらかさとかを活かしつつ、新しいものを作ってるわけですよ。で、それをやってないところは横ばいか下がってるかどっちか。今日本にだいたい240くらい伝統的工芸品ってあるんですけど、商業的に成り立ってるものって半分くらいなのよ。例えば塗り物とかはすごいバッティングするし、作るには当然職人技が必要で手間もかかる。それを安いものとかだったら数千円とかで売っている。で、職人さんに「これ合うんですかね?」って聞くと「まぁ補助金があるからなんとか」って答えが返ってきてさ。
山仲:補助されないとやっていけないとこは多いよね。
土屋:まぁ筆の場合は化粧筆とか派生して拡がりがもてたんでまだやってけるんですけど、縛られているともうどうにもならなくなると思う。
山仲:さっきの技術の話じゃないけど、今あるものだけで伝統に固執していると新しいものは生まれないし変化し続けていくことが重要だよね。そのためにもやっぱり外との繋がりがね。
土屋:だから「Connecting WORLD」ですよ。
山仲:笑。うちは人ですけど
土屋:笑
本多:実際に10年続く会社でも約6%ぐらいの確立って言われているなかで、45年、72年と続いているというのは業界問わずすごいことですし、その企業のトップのお二人が共通して、強みを磨きつつも変化が重要というのはとても説得力があります。
山仲:それは間違いないよね。あとは当たり前だけどどこを狙うかっていうのは重要で、たとえば服とかに使う金糸と銀糸ってラメが入っている糸を作る会社が日本にあるんだけど、それって日本でしか作れないんだよね。ヨーロッパで有名な刺繡糸のメーカーは、基本はその国で糸が作られていて「メイドイン●●」ってなってるんだけど、金糸、銀糸には「メイドインジャパン」って書いてたりするんだよね。自分らで作れないからね。
だからそういうニッチなとこでトップを取るのが今後日本が生き残っていく道な気がしてね。
土屋:こだわりだね。ほんとに。関心がない人からしたら少しの差って思うかもしれないけど、一部の人にとってはその差ってすごい重要で替えが効かないことってやっぱりあるし、そういう人たちに本物を提供し続けたいよね。それができるのが ものづくり だし、職人技だからさ。
今回の取り組みがまさにそうだけど、DXを進めて行ったら最終的には本当に価値があるアナログな部分が残ると思うし、そこをできる職人の地位が向上してかないといけないよね。
山仲:本当そう。

DXに取り組むには現場の理解も必要不可欠

本多:お二人はそういった想いがあって今回も我々とDXに取り組むという決断をしていただたと思うんですけど、社内の方々はある意味、今までやってきたことが大きく変わるかもしれないという不安もあったと思うんですよね。
特に現場の方にはどういった形で今回の件を伝えたんでしょう?
土屋:新しいことを始めるんで反対の意見があるのも当然なんですけど、そこは理念に立ち返って考えるように言いましたね。そもそも僕たちは「筆を通して、世の中に笑顔と喜びと勇気を与える。」という理念があって、筆を作るのもそのための手段の一つなんですよ。だから色んな種類の筆を作ってますけど、根本にはこの理念がある。いい化粧筆を作ったら喜んでくれる人がいるか?いるならやろう!という風に。
今回のDXも「今ある単純作業とか工程の把握とかがわかりやすくなったらもっと時間を違うことに使えて、もっといいものができる。それはお客さんの笑顔に繋がってるんじゃないん?」って問いかけたんだよね。そしたら後ろ向きだったメンバーもハッてなったね。
やっぱり新しいことをやったら摩擦が起きるんだけど、そういうメンバーの意見にも耳を傾けて「その意見が正しいかもしれないからぶつけてみろ」と本人には伝えて、そしたらそれに対する回答や提案が当然出てくるじゃないですか?だからお互いに考えて、こうしようってみんなののアイディアが入ってるんですよね。今回のDXの取り組みも検討段階から現場のメンバーも話聞いてるし、アイディアを言ってるわけだから皆でこれ作り上げてくぞって一体感が生まれたわけですよ。
結局僕がトップダウンでやっても手に負えないし現場もやる気がでない。だからこそ各部署から人を呼んで話し合って社員の「じゃあこういうことやりたい」って意見が出てきたりして、そういうメンバーには裁量と責任を持ってもらって「しっかりお前が進めろよ」って任せてる。
でもその方が加わってくださったおかげで勝手に作ってる感覚がなくなりました。
一回目に我々から提案した後に現場の方々のたネガティブな意見も含めて真剣に話し合ったからこそ、一緒にいいもの作ってくんだってチームになれましたね。

(同席していた東洋電装FRICS Fabチーム中野修の発言。今回のプロジェクトでは東洋電装サイドを牽引)
山仲:うちも本当にそうですね。勝手に進めると疎外感もあるし関係ないって思っちゃうしね。やるかやらないかはあるけど、現場の意見も聞いて理念に立ち返って考えてやるかやらないか決めるってのがね。
うちも「Connecting people」って理念があって人と人を繋げることが俺らのミッションでビーズもその手段の一つというのを軸に動いてますね。だから今回の取り組みも今まで以上に人と人を繋げていくための手段としてやってるわけで、100%上手くいく保障なんてものは当然どこにもないけど、理念から考えたら当然やった方がいいよねって。
土屋:一緒だよね、もう最後は東洋電装に騙されたと思ってやってみようって言って。笑
山仲:そうそう、絶対騙さんけえ。逆だったら同じ中小の製造業が地域の同業騙すか?って言ってね。
東洋電装に頼もうって。やっぱ最初の話に立ち返るけど人間性だよね。
土屋:間違いない。あと世の流れがDXだからやるわけじゃなくて理念で考えてやってるとこが大事だね。
本多:なるほど、職人の価値向上、そしてお二人の理念を実現するための手段として、引き続きDXの伴走をさせていただければと思います。
本日は貴重なお時間ありがとうございました。

理念を実現するための手段として、ものづくりに取り組まれていて、今回のDXもその手段の一部。
長期的に価値を提供していくためには新しい人が入り続けなければならない。
そのために職人の価値を創造し、伝え高めていく。
そんな世界を実現するために走り続けている2社の代表お二人のインタビューでした。

東洋電装も ものづくり企業のDXに伴走することで職人の価値向上に貢献できるよう努めて参ります。